畏怖

 それからまたしばらくしてようやく新婦が到着。純白のドレスに身を包んだ姿に圧倒されて、俺は直視できなかった。それくらい綺麗だった。今まで結婚式に出席することすらほとんど無く、身近な人のドレス姿を見るのは初めてだった。こんなにも人は美しくなるものなのかと思うくらい。本来なら一言くらい褒めるべきだったんだろうけど、そんな気も回らないくらい緊張していた。新婦役の人は大先輩だし、俺がその人に「怖い人」という印象を持ってたのもあってだと思う。必要以上に緊張してた。新婦役のAさんもそれを感じ取ったらしく、二人きりになってからすごくいろいろ話してくれた。Aさんにとっては俺に彼女がいないことが救いだったらしい。彼女がいる人とそういうことをするのは模擬とは言え気が引けるんだと。彼氏がいる人とこんなことする俺も気が引けるんですけど…。って感じでしたけどw。
 リハーサルの前に二人並んで記念撮影。はっきり言って俺は写真を撮るのも撮られるのも大嫌いだ。写真写りが悪いということと、自分の顔をなるべく自分で見たく無いというのがある。緊張した自分がいったいどんな顔をしてるのか、考えただけでも恥ずかしいよ。アホ面下げて衣装着た自分を見たくなかった。そういう意味では俺にとっての救いは控え室に鏡が無かったことだな。