震え止まらないわ

 客が入っていざ本番。扉が開き、二人腕組んで教会へ入っていく。客はみんなこっちを見ている。とりあえず客の顔だけは絶対見ないと決めていたのでずっと十字架を見ながら歩いていた。定位置まで行ってストップ。牧師の言葉を聞き、賛美歌斉唱。この時賛美歌の歌詞カードを持たされるんだけど、初めて自分の手が震えていることに気づいた。新婦も俺が持ってるカードを見るので俺は震えを必死に抑えようとする。しかし抑えようとすればするほど止まらない。仕舞いには唇も少し震えてきた。
 宣誓では、「はい、誓います」って言うんだけど、そこは流石に声が裏返ることも無く普通に言えて一安心。
 指輪の交換。お互いの左手を取り合って、まずは新郎から新婦の指へ指輪をはめる。Aさんの手はとても小さくて、細く綺麗な指をしていた。その指に俺が指輪をはめる。将来こんな光景をもう一度見ることがあるのかなぁとか思いながら。そして新婦から新郎へ、同じように指輪がはめられる。
 誓いのキス。新婦のヴェールを上げ、肩にそっと手を添える。手を添えてから時間を置いてしまうと見詰め合う時間ができてしまって笑っちゃうので早めに顔を重ねた。一応リハの時よりは自然でそれらしくできたんじゃないかなと思いますw。5秒ほどしてから顔を離した。新婦は堂々としたものなのに新郎の手が震えてるってどうよw。
 あとはもう説明めんどくさいから省きます。時間にして20分くらいだったと思うけど、なかなか良い経験ができたんじゃないかなと。Aさんともこれを気に少しは仲良くなれればと思います。まぁ俺次第だけどね。いつまでも怖がってたら仲良くなんてなれないし会話もままなら無いから。
 事務所に帰ってから今日どうだったかとかを所長に聞かれた。Aさんは
「自然な感じでよかったと思いますよw」
って笑いながら言ってた。いつもの人は芝居が臭すぎて変らしい。俺は演技なんて考えてる余裕すらなかったから…。まぁ今回限りだし一回くらいやってみるもんだと思ったけど、噂によると一回やってしまうと次もやらされるらしい。まぁビジュアル的に問題あるから代わりを探してくださいとは言っておいたけど…。
 そのあと別の部屋で宴会があって、それも全部終わってからみんなで今日の写真を見ていた。俺はそんなモンみたいと思わないから見せてもらわなかったけど、みんな写真を見るたびに俺の方を見てニヤニヤしてた。Aさんは
「ちゃんと恋人同士って感じに写ってて良いやん!」
って喜んでた。そのうち写真貰えると思うけど焼却処分が妥当な線ですね。いらないもん。大阪に来た人にだけ特典で見せてあげてもいいけどw。
 なんかいっぱい書いたけど、要するに俺には荷が重かったということです。こんな俺をおまえら「お疲れ様」って労ってくれ。